その腕の腫れは副反応? ~新型コロナワクチンに備えよう④

このシリーズは、新型コロナウイルスワクチンが日本に導入されるにあたり、読者の方がワクチンの安全性や副反応についての正しい基本的知識を身につけていただくことを目的としています。以前のシリーズの記事も合わせて読んでいただければわかりやすいかと思います。

いよいよファイザー・BioNTechやモデルナといったmRNAワクチンのトップランナーたちが出そろいました。CDCやFDAでの審査でも様々なデータが発表され議論されましたが、その中でも今回はワクチンを打った後の腕の腫れなどの局所反応や発熱などの全身反応についてお伝えしたいと思います。

これらのよく耳にする症状は、ワクチンを接種したその日から大体7日間の間までで評価する項目で、専門的にはSolicited Adverse Event(Solicitedの適切な日本語はあまりないのですが、非自発的つまり、あらかじめある程度生じるとわかっていて聴取することを決めている有害事象のこと)と呼びます。これらの症状は、ワクチンを打った後なので前後関係があり有害事象に属しますし、ワクチンを接種した直後や数日以内に起こるもので、かつ他のワクチンの経験則からワクチンと因果関係があるとわかっているものを指します。

しかし、これらを厳密には副反応と呼ぶべきなのでしょうか?

確かにメディアや医師によっては副反応と呼ぶ方もいらっしゃるかもしれませんが、予防接種の安全性を評価する専門家の間では、このような反応は特にReactogenicity、反応原性もしくはシンプルに反応性と呼んでおり、いわゆる広義の副反応adverse reactionとは区別していることが多いです。

ではなぜ前後関係もあって因果関係もある反応を、副反応と呼ばず、わざわざ反応性と呼ぶのでしょうか?

それには明確な科学的理由があります。そもそもワクチンとは、体に異物を入れることで“体に反応を起こさせて”抗体を作ることが目的です。全く反応が起きなければ抗体を作ることもなく、全く意味のない効果のないワクチンとなりお蔵入りになります。

では、体で免疫反応が起こり抗体を作る過程で、体はいったいどんな反応が起きるでしょうか?

それが実は、いわゆる接種部位の局所反応だったり全身反応だったりするのです。つまり、ワクチンを打った場所が腫れたり、赤くなったり、痛くなったりすることは、体がワクチンに反応している証拠なのです。体の免疫反応は、こうした局所の反応だけでなく、ときには発熱だったり、だるさだったり、頭が痛くなったりする全身の反応として現れることもあります。つまり、これらの反応は体が正常にワクチンに反応することによって起きる正常な反応なのです。したがって、新型コロナから体を守るために必要な抗体を作るために必要な反応であり、これを人体に悪影響の反応である副反応とは区別し、正常の反応性Reactogenicityと呼ぶことにしているのです。

しかし、こうした議論も反応性の程度によります。例えば、この反応性も程度があまりにもひどければ許容できないレベルになるため、そういったワクチンは使い物になりません。具体的には、グレード3や4になる強い反応性が頻度が多く見られる場合は、ワクチンの量を減らしたり、回数を減らしたりする必要があります(これらを第1・2相試験でチェックしています)。

さてそれでは、こうした知識をもとに実際のデータを見てみましょう。こちらは、ファイザーのワクチンの反応性のグラフです。

FDA VRBPAC資料より
FDA VRBPAC資料より

BNT162b2もしくは30μgと書いてある項目がワクチンであり、Placeboと書いてあるほうがプラセボ(生理食塩水)になります。上の図は局所の反応をまとめたもので、Redness(赤くなる)やSwelling (腫れ)は頻度は少ないですが、Pain (痛み)はプラセボと比べて高率で認めていますね。また、下の図は、全身反応のみたものですが、Fever (熱)、Fatigue (だるさ)、Headache (頭痛)といった反応の頻度が多いことがわかります。

では、このワクチンは危ない副反応の多いものと判断されるでしょうか?

答えは違います。まずご覧のように、ほとんどの項目が軽度(緑色のバー)から中等度(青色のバー)の反応性になっているのがわかります。この軽度とは具体的にどのようなレベルかと言うと例えば、あぁワクチン打った後ちょっとだるいなぁ、でも普通に生活はできるしすぐ治ったけどね、といった倦怠感でも被験者さんはチェック項目の軽度倦怠感に〇をつけます。さらに実は、これら全ての症状は平均して2日前後で消失しています。つまりこのデータから言える事は、確かに一部の症状は高い確率で認めますが、ほとんどが軽度から中等度の反応性でしかも数日で消失していてるのです。

これを例えば一部のメディアが、ものすごい頻度で発熱やだるさ、頭痛が起きるなんて、副反応の怖いワクチンだ! と非難するのは過剰な反応だとわかりますね。

事実、ワクチンを公正に審査する多くの専門家は、これらのデータからmRNAワクチンの反応性Reactogenicityは安全で許容範囲内であると判断しています。繰り返しますが、ある程度の体の反応はワクチンが抗体を作るために必要であり、問題はそれが許容内の反応であるか否か(程度と症状の持続性)であり、ただ単に何%の頭痛がでるから危険といった単純な頻度の高さのみで判断するものでは無いのです。確かに今までのワクチンに比べてmRNAワクチンは、こうした反応性が出やすいワクチンであるのは確か(とくに二回目の後)ですが、裏を返せばとてもよく体が反応して抗体をわんさか作っているんだなと考えれるのです。一方、現実問題として、翌日に熱がでてしまうと仕事などに支障がでるので、翌日の勤務などの調整はある程度考えなくてはならないかもしれません(現在、CDCでどれくらいの頻度で生活に支障がでるのかデータ収集中です)。ちなみに、こういったワクチン後に熱に、解熱剤を使うのはぜんぜん大丈夫なので使ったほうが楽になるのでおすすめです。

仮にワクチンを打ってこういった軽度から中等度の症状が1、2日出た場合でも、新型コロナにかかってしまい一部は重症化し、さらに人工呼吸器などに繋がれて、最悪の場合は死んでしまうことよりはマシだと考える方がほとんどだと思います。

ここでも、ゼロリスクは存在しないという原則の考え方です。つまり、打たない選択肢もある程度リスクが伴い、その打たないリスクよりも接種するリスクの方が極めて少ないことが現時点でわかっている範囲内ではいえるのです。

今日はワクチンの反応性Reactogenicityの考え方について解説しました。

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