不安を煽る誤情報に気をつけて~新型コロナワクチンに備えよう③

まったなしでメディアには誤解を生む情報が流れてきているので急ぎ更新します。

まず、ファイザーのワクチンが「効きすぎることが心配だ」は本当か?

指摘されているとおり、確かに本物の野生の新型コロナウイルス感染が人体に様々な異常な免疫反応を起こすことはわかってきています。しかし、本物の感染への反応と、ワクチンへの反応が全く同じになるわけではありません。順に説明します。まず、新型コロナウイルスはいくつかのタンパク質によって構成されています。そのウイルスが体内に入ると、これらのタンパク質に対して別々の抗体を作って攻撃しようとします(例えば4種類のタンパク質を認識すれば4種類の抗体を作る)。この免疫反応の過程で、異常な免疫反応が起こることが指摘されています。一方、ファイザーなどのmRNAワクチンのターゲット・目的は、下記のウイルス本体の一部分で、とげタンパク(スパイクプロテイン)だけを作ることです。このとげタンパクが感染に重要な役割を果たしていることがわかっているので、ここをねらって攻撃すれば新型コロナウイルスの感染症を防げるのではないかということです。

*Photo Courtesy of CDC

つまり、上の図のように、自然感染では、ウイルス全体のいろいろなパーツ(赤、オレンジなど)をねらって様々な異なる抗体を作ることになる一方、ワクチンによる免疫反応は、理論上赤い部分をねらってのみの反応になります。よって、新型コロナウイルスの自然感染で起こる反応と、ワクチンで起こる反応は一緒ではないことが考えられます。しかしながら、一緒ではないけど何が起こるか未知の部分はもちろんありますので、慎重に市場に出た後にモニタリングすることは重要であり、現在進行形でCDCは体制を整えています。

さて、本題の効きすぎるから危ないのか?という疑問に関しての私の答えはNOです。むしろ逆です。例えば、新型コロナウイルスワクチンで一部懸念されている副反応のひとつに、ワクチンによって逆に感染が悪化してしまう病態(Vaccine-mediated enhanced disease: VMED)があります。この病態はデング熱に対するワクチンや昔のRSワクチンなどで認められた現象で2つに分けられるのですが、どちらもウイルスに対する中和作用の低い抗体(つまり出来の悪い抗体で効果の低いもの)が多く体内に産生されることによって生じると考えられています1(詳しくは医学界新聞に掲載)。このVMEDを防ぐには、高い中和抗体反応があり質の高い抗体を作るワクチンが必要とされており、出来の良い・効果の高いワクチンこそ、深刻な副反応を防ぐことにつながると専門家の間では考えられています1。以上から、効果が高い・効きすぎるから心配というロジックには首をかしげてしまいます。

さて続きます。

「2万人程度の試験では10万人に1人とか、100万人に数人起きる重篤な副作用については何もわからない」

「長期的に多発性硬化症なども過去のワクチンでは誘発された」

まず③について書きます。多発性硬化症は自己免疫が関係するとされている神経の病気ですが、結論からいいますと、ワクチンによって多発性硬化症が誘発されたという昔の説は現在では否定されています2-5。1990年代にB型肝炎ワクチンと多発性硬化症の前後関係(!もう大丈夫ですね、因果関係ではありません!☆、詳しくは過去記事へ)が指摘されましたが、その後の数々の質の高い疫学研究でワクチンとの関係はことごとく認めず(因果関係を認めなかった)、否定されています。ですので、アメリカでもCDCは念のため引き続きモニタリングこそすれど、多発性硬化症について特別に気を付けるようなことは必要ないとしています。

いきなり多発性硬化症などなんだか重症そうな名前がでてきてワクチンで起こったなんて書かれたら誰だって怖くなりますよね。でも、上記のように事実と最もアップデートされた情報を知っていれば安心しますよね。ワクチンとはもはや因果関係のない疾患なのです

予防接種の専門家と一口にいっても、今はいろいろな分野に細分化しています。たとえば基礎ウイルス学が専門でも、予防接種疫学研究の専門家とイコールではありません。逆もしかりです。医師の言葉は本当に重みが違いますので、特にメディアなどで発言する際は注意が必要なので、自戒の意味も込めて気を付けねばと思っています。

②についての私見はまた後日書きます。取り急ぎで書きましたので、誤字などありましたらすみません。ご一読ありがとうございました。

  1. Graham BS. Rapid COVID-19 vaccine development. Science (New York, NY)
    2020; 368:945–946.
  2. CDC. Hepatitis B and Multiple Sclerosis: https://www.cdc.gov/vaccinesafety/concerns/history/hepb-faqs.html
  3. Ascherio A, Zhang SM, Hernán MA, Olek MJ, Coplan PM, Brodovicz K, Walker AM. Hepatitis B vaccination and the risk of multiple sclerosis. N Engl J Med. 2001 Feb 1;344(5):327-32. doi: 10.1056/NEJM200102013440502. PMID: 11172163.
  4. Mikaeloff Y, Caridade G, Rossier M, Suissa S, Tardieu M. Hepatitis B vaccination and the risk of childhood-onset multiple sclerosis. Arch Pediatr Adolesc Med. 2007 Dec;161(12):1176-82. doi: 10.1001/archpedi.161.12.1176. PMID: 18056563.
  5. Mailand MT, Frederiksen JL. Vaccines and multiple sclerosis: a systematic review. J Neurol. 2017 Jun;264(6):1035-1050. doi: 10.1007/s00415-016-8263-4. Epub 2016 Sep 7. PMID: 27604618.

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